3Dプリンターでアイデアを形に

3Dプリンターで使用できる素材は?特性や選び方まで解説

3Dプリンターで使用できる素材は?特性や選び方まで解説

製品開発のスピードアップや、生産プロセスの柔軟性を高めるために、製造業を中心に、さまざまな業界で導入が進んでいる3Dプリンター。開発部品の試作や、生産ラインで使われる治工具の制作に活用されています。また、大型3Dプリンターでは、立体看板やインテリア、大型のフィギュアや装飾、住宅や橋なども造形可能です。

そんな3Dプリンターですが、思い通りの造形物を完成させるには「どんなプリンターを使うか」だけではなく「どんな素材を使うか」も重要となります。素材ごとの特性を踏まえて、より適した素材を選ぶようにしましょう。この記事では、3Dプリンターで使える素材の特性から、選び方のポイントまで解説します。

3Dプリンターで使用する素材の選び方

3Dプリンターで使用する素材の選び方

3Dプリンターを使う場合、主流な素材として挙げられるのが、強靭で軽量な汎用プラスチックの「ABS樹脂」と、植物由来の乳酸を重合して製造される汎用プラスチック「PLA樹脂」の2つです。どちらも造形精度が高い素材です。しかし、3Dプリンターの素材は年々進化しており、ABS樹脂とPLA樹脂をベースにしながら、特殊な材料を混ぜることで、素材を選択する幅も広がっています。

その分、「どの点に着目して選べばよいかわからない」という方もいることでしょう。素材によっては不向きな加工もあります。適した素材を選ぶ際のポイントをご紹介します。

造形物にどれくらいの精度や強度を求めるのか

3Dプリントでは、3DCADのデータ通りに造形物を作成していくことになりますが、素材によって、造形物の精度が異なります。出力の目的が試作品なのか、それとも製品なのかによっても、必要な精度は変わってきます。寸法通りにしたい場合や、表面の精度を高めたい場合は、高精度の造形物がつくれる素材を選ぶようにしましょう。

また強度もABS樹脂とPLA樹脂など素材によって異なります。素材にある程度の強度がなければ、形状が保てない造形物もありますので、精度と同様に強度も、素材選びにおいて、着目すべきポイントです。

精度については、「3Dプリンターの気になる「精度」。評価するポイントとは?」において、できるだけ正確で美しい造形物を作るための注意点、3Dプリンターにおける精度とはどのように評価するのかといった点も紹介しています。また、強度については「3Dプリンターの造形物の強度はどれくらい?造形方式や材料から解説」において、造形方式による強度の違いや、強度を高める方法などを解説しています。ぜひご覧ください。

造形物に着色をしたいかどうか

3Dプリンターで使用する際に、着色がしやすい素材とそうでない素材があります。また、樹脂の種類によっては、塗装剤による強度低下が生じる場合もありますので、仕上げの工程まで考えて素材を選びましょう。一般的に着色がしやすい素材は、多様な色素とよく結びつくABS樹脂で、色鮮やかなプリントに適しているといわれています。反対にPLA樹脂は塗料が定着しにくい特性があるといわれています。また、素材そのものに着色されている場合もあります。色ごとにパーツ分けすることで、塗装をせずともカラフルに仕上げることができます。

造形物を研磨するのかどうか

意外と見落としがちなのが、造形物の仕上げです。3Dプリンターで造形を行うときに、重要な役割を果たす「サポート材」ですが、造形した後は取り除かねばなりません。さらに、サポート材を除去した箇所のみを研磨するのか、全体を研磨する必要があるのか、そもそも研磨しないのか、など塗装とも関わる部分であるため、前後の工程も考慮する必要があります。研磨を必要とする際、サンドペーパーなどで仕上げを行うのであれば、硬さのあるPLA樹脂よりも、研磨しやすい、ABS樹脂やアクリル・エポキシなどの素材を選ぶとよいでしょう。

3Dプリンターのサポート材の役割って何?最小限に抑えるメリットを解説」では、サポート材が必要な方式や造形物の形状について解説しています。ぜひご参考にしてください。

どんな環境で使用するのか

素材のなかには、ナイロンのように湿気に弱く、乾燥した状態での保存が適しているものがあります。また、高温あるいは、低温のもとで造形物を使うのであれば、使用状況に適した素材をあらかじめ選んでおかなければなりません。素材を選ぶ際には、造形物をどんな環境で使用するのかについても、イメージしておきましょう。

3Dプリンターで使用する主な素材と特徴

3Dプリンターで使用する主な素材と特徴

3Dプリンターには、さまざまな方式があり、それぞれ適した素材が異なります。主な素材としては、樹脂と金属に分けることができます。ここではその特徴について解説します。

樹脂

熱溶解積層方式(FFF/FDM)や光造形方式(SLA/DLP)では、樹脂系の素材を用います。具体的にみていきましょう。

熱溶解積層方式(FFF/FDM)

家庭用3Dプリンターで最もよく用いられているのが、熱溶解積層方式(FDM)です。熱溶解積層方式では、フィラメント(可塑性樹脂を糸状にしたもの)を高温の熱で溶かしていき、ノズルから排出させながら、一層ずつ重ねていくことによって、立体物を造形していきます。

素材としては、ABS樹脂やPLA樹脂など、工業製品にも用いられる「熱可塑性樹脂」が用いられます。温度が高いと溶融して、冷えると固化するという特徴を持っています。また、樹脂製の中でもゴムのように柔らかいゴムライク素材というものもあります。

フィラメントについて、さらに詳しく知りたい場合は「3Dプリンター用のフィラメントとは?素材ごとのメリットや造形方式を解説!」をご覧ください。フィラメントの種類ごとのメリット、選び方のポイントを解説しています。

光造形方式(SLA/DLP)

光造形方式は、紫外線の照射により硬化する特殊な樹脂素材(レジン)を用いて、一層ずつ印刷して、立体的な構造をつくる方法のこと。現在、実用化されている3Dプリンターの方式としては、最も古くからあるものです。

光造形方式では、液体樹脂の素材を用います。主にエポキシ系樹脂が使われることが多く、ABSライク樹脂やPP(ポリプロピレン)ライク樹脂などが代表的なものです。

ABSライク樹脂はABSと同様に、強度と剛性に優れています。その一方で、PPライク樹脂は、PP樹脂と同様に、耐衝撃性や耐熱性が強みです。造形物の特徴によって、素材の使い分けを考えてみてください。

光造形方式の基礎知識は、「光造形3Dプリンターとは?基礎知識を解説」をご覧ください。

粉末焼結積層造形方式(SLS)

粉末焼結積層方式は、「ベッド」とよばれる粉末が敷き詰められたプリンター内に、赤外線レーザーを使って高温で粉末を一層ずつ焼結して造形します。複雑な形状でも粉末の中でとどまることができるので、サポート材なしで造形できます。

未焼結の粉末は再利用できるのも特徴の一つです。使用可能な主な素材は、ナイロン樹脂やセラミック、金属などが上げられます。近年では、耐熱性や強度がとても高い高機能樹脂のスーパーエンジニアリングプラスチックが登場しました。150℃以上の高温に耐えられ、機械的強度はもちろん、耐薬品性、寸法安定性、生体適合性などに優れているため、高温部での使用を含む自動車のエンジンや医療機器などにも使用されています。

金属

金属を素材に3Dプリントを行いたい場合に代表的な造形方式を紹介します。

パウダーベッド方式

敷き詰めた金属粉末にレーザーや電子ビームを照射して、溶かして固めながら造形物を作ります。再現性が高く寸法の精度も高いのが特徴です。取り出しの際に、固まっていない金属粉末を除去して取り出す必要がありますが、除去した粉末は再利用が可能です。

メタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)

「メタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)」は、素材となる金属粉末の噴射とレーザービームまたは電子ビームの照射を同時に行う造形方式です。欠損した金属部品の部分補修といった目的でも利用ができます。

代表的な造形方式についてさらに詳しく知りたい場合は、「金属3Dプリンターとは?作れるもの、メリットや造形方式を解説!」もご覧ください。

バインダージェット方式

バインダージェット方法は、まず造形エリアに金属粉末を敷き詰めて、バインダーと呼ばれる接着剤を噴出して形を整えていきます。その後、焼結炉で焼き固めて造形していきます。サポート材が不要な点や着色がしやすい点、さらに造形速度が速い点などが、バインダージェット方法の強みとして挙げられます。

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この記事では、3Dプリンターで使用する素材の選び方について解説しました。実際に、3Dプリンターの素材を選ぶ際には、特徴に加えて予算面も含めて、多角的に検討する必要があります。費用を考えると、まずは3Dデータを外部業者に渡して、出力を外注する方法も検討したほうがよい場合もあるでしょう。「3Dプリンターでの造形を依頼するには?外注するメリットや依頼方法」では、3Dプリンターでの造形を外注する際に知っておきたいポイントやメリット、デメリットについて解説しています。

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写真/Getty Images