3Dプリンターでアイデアを形に

3Dプリンターの造形物の強度はどれくらい?造形方式や材料から解説

3Dプリンターの造形物の強度はどれくらい?造形方式や材料から解説

3Dプリンターを用いて造形物を作る場合に、その「精度」と同様に気になるのが「強度」です。せっかくつくった造形物が使用しているうちに、破損してしまっては意味がありません。どのような条件が造形物の強度に影響を与えるのでしょうか。樹脂3Dプリントと金属3Dプリントに分けて、3Dプリンターの造形方式による強度の違いや、強度を高める方法などを解説します。

樹脂3Dプリンターの造形方式

樹脂3Dプリンターの造形方式

樹脂3Dプリンターは、金属3Dプリンターよりも早く実用化され、樹脂の使い勝手の良さから、さまざまな造形方式が利用されています。特に、以下の3つの方法が一般的に採用されています。

光造形方式(SLA)

SLA方式は光造形方式のひとつで、材料の樹脂素材(レジン)に点状の紫外線を照射し、土台側から少しずつ樹脂を固めます。紫外線を当てられる面積が小さいため、解像度が高く、精度の高い造形が可能となります。

その一方で、使用される樹脂の種類や蓄層の厚みによって強度が異なります。また、照射される光のエネルギー量や波長は、樹脂の効果速度と結合強度に影響を与えるといわれています。

熱溶解積層(FDM)方式

樹脂造形におけるFDM方式では、熱で溶かした樹脂をノズルから出して、一層ずつ積み重ねていくことで造形します。素材としては、ABS樹脂やPLA樹脂など、工業製品にも用いられる「熱可塑性樹脂」が用いられます。温度が高いと溶融して、冷えると固化するという特徴を持っています。

強度は、樹脂造形によるFDM方式では、水平方向(X-Y)よりも、垂直方向(Z)のほうが、引っ張り強さや降伏強度が低くなる傾向にあります。求める強度によっては、造形姿勢が制限されてしまう場合があるため、モデリングの段階から注意しなければなりません。

また、FDM方式は積層していくために、どうしても特定の方向にははがれやすいという弱点もあります。さらに、熱収縮によって大きな応力が発生しやすくなることにも注意が必要です。

粉末焼結積層/結合(SLS)方式

粉末積層焼結(SLS)方式では、敷き詰めた粉末状の材料を、レーザー光線で照射して焼結させることによって、一層ずつ積層しながら造形します。あとで紹介する金属3Dプリンターのパウダーベッド(PBF)方式と方法は同じで、高精度かつ高強度な造形が可能です。ただし、造形物の表面に、ややザラザラ感が残ってしまうので、クオリティーはやや低くなります。

樹脂3Dプリンターの強度を高めるには流量を上げる

流量とは、ノズルから吐き出すフィラメントの量のことです。100%が標準値となり、増減させることで線の太さが変わってきます。流量を上げることで、1本1本の線が太くなり、積層間でより強固に接着させられます。

流量については機器で設定値を変更することができますが、注意点として、変更は「充填部のみにすること」が挙げられます。外壁や1層目の流量なども増やしてしまうと、見栄えが悪くなったり、接着に影響が出てしまったりすることがあるのです。

金属3Dプリンターの造形方式

金属3Dプリンターの造形方式

金属3Dプリンターの技術は年々向上しており、一般的な用途であれば、支障をきたすことはない強度で、造形物が作れるようになりました。特にパウダーべッド(PBF)方式が主流となっていますが、他の方式についても紹介します。

パウダーベッド(PBF)方式

パウダーべッド(PBF)方式では、レーザーや電子ビームによって、平たんに敷き詰めた金属粉末を一層ずつ溶融し、固着していくことで積層させていきます。強度を考えたときに、気をつけたいのは「材料に何を使うか」ということです。

ステンレス鋼材(SUS316)を用いて、PBF方式で造形物を作った場合、水平方向(X-Y)よりも、垂直方向(Z)のほうが、引っ張りの強さや降伏強度が、低い傾向にあります。

一方で、アルミ合金(AlSi10Mg)を材料に用いた場合は、熱処理を行うことで、水平方向(X-Y)と垂直方向(Z)の引っ張り強さや、降伏強度を同程度にできます。

メタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)

メタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)は、金属粉末の噴射とレーザービームまたは電子ビームの照射を同時に行い、造形部分に溶かした金属材料を積層させ、凝固させます。造形物の表面を清浄し、活性化する処理を行うことで、金属粉末の結合を強化することが、強度を高めるポイントです。また、温度や圧力、時間などのプロセス条件を調整し、金属粉末の均一な推積を確保しましょう。

熱溶解積層(FDM)方式

熱溶解積層(FDM)方式は、熱可塑性樹脂と金属粉末を配合し、熱で溶かしながら素材を押し出して積層し、造形していきます。金属粉末を結合するための脱脂と焼結を行いますが、樹脂分が抜けて造形時よりも収縮することを考慮する必要があります。高強度な熱可逆性材料を選びましょう。

このように、強度は材料によって異方性の強弱が異なります。造形検討時に、求める強度を満たせているかどうかを、材料データシートなどで確認するようにしましょう。

金属3Dプリンターの強度を高めるには充填率を高める

充填率とは、3Dプリンターで制作した造形物の内部の密度のことをいいます。充填率が0%の場合は、造形物の中身が空洞の状態で、充填率の数値が100%に近づくほど、造形物の強度は高まることになります。充填率を高める方法のひとつが、HIP処理(熱間等方圧加圧)です。

造形物が完成してから、HIP処理(熱間等方圧加圧)などの後処理を施せば、金属3Dプリンターによる造形品に、強度を出せます。HIP処理(熱間等方圧加圧)と、高温のなかで、さらに高圧(ガス圧)を加えることで、造形品の密度が高くなります。ガス圧を用いるため、複雑な構造体でも均等に圧力をかけることが可能です。

3D-FABsのメリット

欲しいのは、部品よりノウハウだ。3Dプリントのシミュレーション・価格試算をデジタル化。3D-FABsへ

3Dプリンターで作成した造形物の強度について、解説しました。造形物に適した強度を持たせるには、いろいろなパターンをシミュレーションすることが重要だといえそうです。

学べる見積サイト・3Dプリントソリューション「3D-FABs」では、素材と造形方式の組み合わせを工夫したり、造形姿勢を変えたりすることで、どんな効果が表れるかを検証できます。3Dプリンターを使用したことがない初心者でも、3Dプリントについて一から理解可能です。ぜひ無料で会員登録するところから、始めてみてください。

写真/Getty Images