「デジタルファブリケーション」という言葉をご存じでしょうか。日本ではまだなじみのない言葉なので、初めて聞く人も少なくないかもしれません。3Dプリンターを始めとするデジタルファブリケーション機器の活用によって、ものづくりの可能性は無限に広がっています。今では世界規模で注目されているデジタルファブリケーションの定義、活用するメリットについて解説します。
デジタルファブリケーションとは?
総務省では、デジタルファブリケーションを「デジタルデータをもとに創造物を制作する技術」と説明しています。具体的には、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械でデータを読み込み、造形物を作る方法を指します。さらに総務省は「製造業における就業形態の革新をもたらす可能性を秘めているのが、デジタルファブリケーションである」として、その可能性に大きな期待を寄せています。
参考:総務省「特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~」
インターネットとデジタルファブリケーションが結びつくことで、従来はできなかったものづくりが可能になる……そんな「ファブ社会」と呼ばれる未来が、まさに今到来しようとしているのです。
デジタルファブリケーションのメリット
デジタルファブリケーションを活用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ひとつずつ解説します。
造形の自由度が上がる
従来の切削加工ではどうしても技術的に実現が難しかった、突き出た部分がある構造や、内部に空洞があるような構造も、3Dプリンターを用いれば、、素材を積層しながら造形するため、複雑な形状にも対応が可能です。3Dプリンターと切削加工のデータ作りの違いをもっと詳しく知りたい方は、「3Dプリンター用のデータと切削加工のデータ作りはどう違う?」をご覧ください。
また、3Dプリンターと3Dスキャナーを用いれば、図面がなかったり、寸法の取得が難しかったりする製品でも、リバースエンジニアリングが可能です。デジタルファブリケーション機器の活用によって造形の自由度が高くなることは、ものづくりの現場において、大きなメリットです。
個人で実現可能なものづくりの幅が広がる
3Dプリンターや3Dスキャナ、3D CADやCGツールなどを用いてデジタルファブリケーションを実施することで、一般の人でも新しいものを制作できるようになりました。これまで製造に関与していなかった人々がものづくりに参加しやすくなり、アイデアに富んだ製品の開発や技術の向上が見込まれます。
設計や試作期間を短縮できる
あらゆるものづくりの現場でスピードアップが求められるなか、デジタルファブリケーションを用いることで、製品の設計や試作の期間を短縮できます。
製品の開発にあたっては、完成品を作る前に試作品を作って、デザインや性能を確認します。しかし、従来の切削加工で試作品を作る場合、できあがった試作品に修正を加える過程を繰り返すことで、完成までに時間がかかってしまいます。
デジタルファブリケーションならば、データを変更すれば、すぐに試作品の形状に反映させることができます。複数のデザイン案を検討したいときでも、簡単に比較検討が可能です。試作に時間をかけることなく、本番の制作までにブラッシュアップを重ねられることは、現場にとって特に大きなメリットだといえます。
製造コストを削減できる
高精度の製造物を大量に作るためには、金型は欠かせない製造ツールでしたが、金型を作ると、時間がかかるだけではなく費用もかさんでしまいます。試作品を金型で作成する場合も同様で、金型の費用を考えると、製造物を大量に作らなければ採算がとれないため、製造を断念したというケースも珍しくはありませんでした。
しかし、金属3Dプリンターを用いれば、金型を作る必要がないので、精度の高い製造物を少量からでも作ることができます。製造コストを削減できる点も、デジタルファブリケーションがもたらす大きなメリットのひとつです。
在庫を過剰に持つ必要がなくなる
デジタルファブリケーションを用いたものづくりでは、過剰な在庫を抱える必要もなくなります。3Dプリンターと素材さえあれば、製品のオーダーが入ったタイミングで、製造が可能です。次にいつ注文が入るかわからない商品を、あらかじめ在庫として持っておく必要がないため、製造費だけではなく、管理コストの削減にもつながります。
カスタマイズや少量多品種での製造が可能になる
デジタルファブリケーションを活用すれば、オーダーに応じた生産が可能になります。お客さまのご要望を取り入れて、カスタマイズした製品を作ることができるため、デザインの自由度が上がります。また、製造物を関係者に配ったり、販売したい場合も、小規模ロットで製品を作れるのは、デジタルファブリケーションのメリットだといえるでしょう。
デジタルファブリケーションで使われている機器
デジタルファブリケーションで使われる機器としては、3D CADの設計データから立体モデルを製造する「3Dプリンター」や、シンプルな操作で3Dスキャンができる「3Dスキャナ」が挙げられます。そのほかに「レーザー加工機(レーザーカッター)」は、デジタルデータをもとにして、レーザー光の出力や照射密度、照射時間をきめ細かくコントロールできます。
そのなかでも、複雑な形状のツールを製造したい場合は、3Dプリンターがおすすめです。すでに製造業での3Dプリンターの活用は急速に進んでおり、デジタルファブリケーションが多方面で実践されています。市場の個々のニーズに合わせたものづくりを行う意味でも、今後、ますます注目されるでしょう。
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写真/Getty Images