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3Dプリンターでも大活躍のABS樹脂とは?特徴や活用事例を解説!

3Dプリンターでも大活躍のABS樹脂とは?特徴や活用事例を解説!

ABS樹脂は、アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)の3種類の異なる成分を組み合わせて作られる合成樹脂(プラスチック)の一種です。


家電製品や自動車部品、玩具、文房具など、幅広い分野で使用されており、3Dプリンターでは、PLA樹脂と並んでよく使われている樹脂です。

この記事では、ABS樹脂の特徴やメリットやデメリット、使用例について解説します。

ABS樹脂の特徴

ABS樹脂の特徴

ABS樹脂の特徴としては「耐衝撃性」「加工のしやすさ」「温度変化への耐性」「表面の美しさ」「化学的安定性」が挙げられます。これらの特徴から、私たちの生活において身近な製品で広く使用されています。

また、熱溶解積層(FDM)方式の3Dプリンターでフィラメント素材としても広く使用されています。複雑な形状やカスタムデザインの部品も、短時間かつ低コストで造形できるため、迅速なプロトタイピングや小ロット生産にも適しています。

ABS樹脂のメリット

ABS樹脂のメリット

ABS樹脂は3種類の異なる成分を組み合わせてそれぞれの特性を取り入れた合成樹脂のため、多くの利点があります。この項目では、ABS樹脂のメリットを解説します。

耐衝撃性

ABS樹脂の顕著な特性の一つが、高い耐衝撃性です。物理的な衝撃に強く、製品が破損しにくいため、玩具やスポーツ用品、自動車の内装部品など、衝撃にさらされる可能性がある製品に適しています。

加工性

ABS樹脂は非常に加工しやすい素材です。熱可塑性樹脂なので、加熱することで容易に成形が行えます。切削加工法で数週間かかる改良も、3DプリンターとABS樹脂フィラメントなら、数日で製品のカスタマイズや修正が簡単に行えるため、試作品の作成やカスタムメイドの製品にも適しています。

温度変化への耐性

ABS樹脂は耐熱温度が約70℃、脆化温度が約−20℃なので、その温度範囲内では安定した性質を保ちます。そのため、温度変化による寸法の変化が少なく、精密な部品や製品の製造に適しています。

表面の美しさ

ABS樹脂は表面に光沢性がある素材なので塗装をしなくても高品質な質感を出すことができます。一方、表面加工がしやすい素材でもあるため、塗装や印刷などでデザイン性を向上させることも容易です。

化学的安定性

ABS樹脂は多くの酸、塩基、油脂などに対して耐性を持っているため、化学的に厳しい環境下での使用にも適しています。

経済性

ABS樹脂は材料コストが比較的低く、大量生産において大きなメリットがあります。

これらのメリットにより、ABS樹脂は自動車部品、家電製品、建築材料、玩具、医療機器など、多岐にわたる産業で広く使われています。近年は3Dプリンティング技術の進展に伴い、その材料としての需要も拡大しています。

ABS樹脂のデメリット

ABS樹脂のデメリット

ABS樹脂は多くの利点を持つ一方、以下のようにいくつかのデメリットもあります。これらのデメリットを理解することは、ABS樹脂を適切に使用する上で重要となるでしょう。

紫外線による劣化

ABS樹脂は紫外線(UV)に弱いため、屋外に長期間さらされると劣化しやすい性質があります。これにより、色あせや強度の低下が生じる可能性があります。

高温での変形

ABS樹脂は一定の耐熱性を持ちますが、高温(約70℃以上)にさらされると軟化したり変形したりする可能性があります。このため、高温環境での使用には適していません。

寒冷環境での脆化

低温下ではABS樹脂が硬くなり、脆くなることがあります。そのため寒冷地での使用にも注意が必要です。

化学薬品への耐性

メリットで紹介した通り、ABS樹脂は化学的安定性に優れており、一部の溶剤や酸、塩基に対しては耐性を持ちます。しかし、強力な溶剤や一部の化学薬品には弱い場合があります。塗装を行う場合は、塗料に含まれる溶剤の種類を確認するようにしましょう。

環境への影響

ABS樹脂は分解性が低く、リサイクルも困難な場合が多いとされています。このため、持続可能性の観点からは、環境負荷もあるため、廃棄時の取り扱いが課題となっています。

燃焼時のリスク

ABS樹脂は、燃焼時に有毒な煙やガスを発生することがあります。これにより火災時の安全性に影響を与える可能性もあります。

ABS樹脂の使用例

ABS樹脂の使用例

ここまで紹介してきたように、ABS樹脂には多くの優れた物理的特性があり、様々な用途に使用されています。

以下に、その使用例をいくつか紹介します。

日用品や雑貨

ABS樹脂は、日常生活の中で幅広く使われています。

その例としては、耐久性と安全性が求められる玩具、耐熱性と耐薬品性が求められる食品保存用器やトレイなどのキッチン用品、美しい表面仕上げや手触りが求められるペンや定規などの文房具が挙げられます。

ABS樹脂は、私たちの日常生活を快適で安全に保つために欠かせない役割を果たしています。

自動車

ABS樹脂は、その軽量性と耐衝撃性、耐熱性から自動車にも広く使用されています。

例えば、ダッシュボード、ドアハンドル、バンパーなどの外観部品や内装部品から、エアコンの吹き出し口のような細かな部分にも使われています。

このようにABS樹脂は自動車の機能性とデザインの両方に貢献しています。

家電

ABS樹脂はその耐久性、耐熱性、そして美しい仕上げにより、テレビや冷蔵庫、洗濯機の外装、掃除機やヘアドライヤーの筐体など、家電製品にも広く利用されています。

また、リモコンや小型家電の操作パネルなど、手に触れる部分に使われることが多いのも特徴です。

3DプリンターでABS樹脂フィラメントを利用する際に留意するポイント

3DプリンターでABS樹脂フィラメントを利用する際に留意するポイント

3DプリンターでABS樹脂を使用して造形する際の重要な要素として、温度管理が挙げられます。

ABS樹脂は冷却時に収縮するため、反りやひずみの原因になります。そのため、加熱ベッドを使用し、90℃~110℃の温度設定が推奨されます。また、ABS樹脂は温度変化に敏感なため、エンクロージャを利用して印刷エリアの温度を安定させることが望ましいとされています。

また反りの防止に接着剤を使用するという方法もあります。印刷の前にテクスチャーペーパーや反り防止のフィルムなどを直接温床台に塗ることで、反りを防止します。

なお、ABS樹脂を加熱する際に有害な物質が発生する可能性があるため、十分に換気することが必要です。

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写真/Getty Images