3Dプリンターでアイデアを形に

3Dプリンターで使えるカーボンファイバーの特徴は?造形のポイントや注意点を解説

3Dプリンターで使えるカーボンファイバーの特徴は?造形のポイントや注意点を解説

3Dプリンターで使用されるカーボンファイバーは、その特性により多岐にわたる産業での応用が進んでいます。この先進的な材料の特徴と、3Dプリントでの活用方法に焦点を当て、造形の際のポイントや注意点について詳しく解説します。

カーボンファイバーはどんな素材?

カーボンファイバーはどんな素材?

カーボンファイバーとは

カーボンファイバーは、極めて高い強度と軽量性のため広く利用されている材料です。カーボンファイバーは、数ミクロンの直径を持つ非常に細い炭素繊維で構成されており、これらの繊維は樹脂やほかの材料と組み合わされて、カーボンファイバー強化樹脂(CFRP)などの複合材料を形成します。

このカーボンファイバーを用いた複合材料は、高い強度を持ちながら同時に非常に軽量であるなど優れた力学的性質を持つため、航空宇宙、自動車、スポーツ用品などの分野で広く利用されています。金属材料に置き換えられることも少なくありません。

カーボン素材のメリット

・高い強度と剛性
樹脂よりもはるかに強く、その剛性も非常に高いのが特長です。これにより、複雑な構造が必要な製品や治工具での使用が可能となります。

・軽量
非常に軽量であり、同じ強度の金属材料と比較して重量を大幅に削減できます。この特性は、航空宇宙や自動車産業で特に重宝されています。

・耐食性
腐食しにくいため、化学的に厳しい環境や塩水環境での利用に適しています。

・熱膨張率が低い
熱による形状の変化が非常に少なく、温度変動の激しい環境での使用に適しています。

カーボンファイバーのデメリット

・高コスト
製造過程が複雑でコストが高く、そのため製品の価格を上昇させてしまう傾向にあります。

・加工の難しさ
非常に硬いことはデメリットでもあり、特殊な機械や技術がないと加工が困難です。また、加工時には有害な粉塵が発生することがあり、適切な安全対策が必要とされます。

・衝撃に弱い
高い剛性を持つ一方で、カーボンファイバーは突発的な衝撃には弱く、クラックや破損が発生しやすい材料でもあります。

・修理が困難
一度損傷を受けたカーボンファイバー製品は修理が難しく、製品を丸ごと交換しなければならない場合もしばしばあります。

3Dプリンターで利用できるカーボンファイバーの種類と特徴

3Dプリンターで利用できるカーボンファイバーの種類と特徴

3Dプリント技術で利用できるカーボンファイバーとして、主要な2形態である「長繊維カーボンファイバー」と「チョップドファイバー」に焦点を当て、それぞれの特徴と注意点について解説します。

長繊維カーボンファイバー

特長

長繊維カーボンファイバーは、その名の通り、長い繊維を特長としており、これにより非常に高い強度と剛性を提供します。製品全体に繊維が連続して配置されることで、荷重がかかる際に力を効果的に分散させ、優れた機械的性能を実現します。

この素材は特に航空宇宙や自動車産業の部品製造に適しており、要求される高い性能を満たすために利用されます。

注意点
  • カーボンファイバーに対応した専用の熱溶解積層(FDM/FFF)方式の樹脂3Dプリンターが必要です。
  • 長繊維カーボンファイバーを用いた3Dプリントに対応した樹脂3Dプリンターは、業務用のみとなり高価であるため、初期投資が大きくなります。
  • 長繊維カーボンファイバー素材自体のコストも高く、供給するノズルの摩耗も早いことから、通常の樹脂3Dプリントと比較してランニングコストがかかります。

チョップドファイバー

特長

チョップドファイバーは、短繊維カーボンファイバーがランダムに分散された状態でフィラメントに混入されています。長繊維ほどではありませんが、通常の樹脂フィラメントよりも強度と剛性が向上します。チョップドファイバーが混錬されたフィラメントに対応する熱溶解積層(FDM/FFF)方式の樹脂3Dプリンターを持っていれば、追加の設備投資をせずにカーボンファイバーの利点を享受できます。

注意点
  • 短繊維のため、長繊維に比べると素材の性能は劣ります。
  • 造形中に繊維がノズルを詰まらせるなど、通常の樹脂フィラメントの利用よりノズルの摩耗が早まる可能性があるため、ノズルの選択やメンテナンスに注意が必要です。特別に設計されたカーボンファイバー強化粉末を用いることで粉末焼結積層/結合(SLS)方式のプリンターでも利用できますが、その際はリコーターの摩耗に注意しましょう。
  • 繊維がフィラメント内で均等に分散されているかを確認するほか、品質のばらつきにも留意する必要があります。

3Dプリンターでカーボンファイバーの使用がおすすめできる場面

3Dプリンターでカーボンファイバーの使用がおすすめできる場面

3Dプリンターでのカーボンファイバーの使用は、その特性を生かす特定のアプリケーションで効果的です。以下は、カーボンファイバーが特に推奨される主な使用場面です。

最終品の造形

カーボンファイバーを含む材料を使用した3Dプリントは、製品の最終形態においても使用することが可能です。これは、カーボンファイバーの高い強度と軽量性が、製品の耐久性と性能を大幅に向上させるためです。

特に、航空宇宙、自動車、高性能スポーツ用品などの分野で、最終的な製品部品として直接使用されます。この素材を使用することで、軽量化を実現しつつ、必要な強度を保持できるため、全体的な効率とパフォーマンスが向上します。

金属パーツの代替

カーボンファイバー強化樹脂(CFRP)部品はその優れた機械的特性により、従来のアルミニウム合金部品から置き換えられることもあります。これにより、重量を大幅に削減しながら、同等またはそれ以上の強度と剛性を提供します。

例えば、航空宇宙業界では燃料効率の向上のために、自動車業界では性能向上と燃費改善のために、アルミニウム合金部品をカーボンファイバー素材の部品に置き換えることが増えています。また振動減衰特性も優れているため、精密機器の部品にも適しています。

機能性プロトタイプ

プロトタイプの製造において実際の使用環境を模倣した材料特性が求められる場合、カーボンファイバーを使用した3Dプリントが有効です。設計段階での機能テストや耐久テストが現実の条件下で正確に行われるため、製品開発のリスクを低減し、設計の最適化を図れます。

カーボン素材で造形する際に留意するポイント

カーボン素材で造形する際に留意するポイント

熱溶解積層(FDM/FFF)方式でのカーボンファイバーを使用した3Dプリントは、その高い機械的性能と機能性から多くの分野で注目されています。しかし、プリントの成功を実現するためにはいくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。

温度管理

カーボンファイバーを含むフィラメントの3Dプリントにおいて、正確な温度管理が非常に重要です。

カーボンファイバーを混合したフィラメントは熱による影響を受けやすく、適切な溶解温度が保たれていないと造形の品質に影響を及ぼすことがあります。

そのためノズルの温度設定は特に重要で、推奨される温度範囲内で一貫して管理することが必要です。温度が高過ぎると材料が過度に流れ出し、低過ぎると層の不十分な接着や詰まりの原因となります。

繊維の方向性

カーボンファイバーの大きな利点の一つは高い強度と剛性を提供することですが、これは繊維の方向に依存する傾向があります。そのため3Dデータの設計段階で、荷重がかかる方向に繊維が配向されるように設計することが重要です。

繊維の方向を最適化することで、材料の使用効率を高めて引っ張りや圧縮に強い構造を実現でき、最終的な製品の性能を向上させることが可能となります。

ノズルが摩耗しやすい

カーボンファイバーを含むフィラメントは非常に硬いため、通常の真鍮(ブラス)製やステンレス製のノズルは摩耗しやすい傾向にあります。

そのためカーボンファイバー専用に強化されたノズルを使用することが推奨されており、ハードメタル製のノズルや、ダイヤモンドライクコーティングが施されたノズルなどが適しているとされています。

また、ノズルの定期的な交換やメンテナンスも、適切なプリント結果を得るために重要です。

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カーボンファイバーを使用した3Dプリントは、その特有の物性により、航空宇宙、自動車、スポーツ用品などの分野で非常に価値の高い技術です。

カーボンファイバーを使用した3Dプリントは、デザインの自由度が高く、製造過程での素材の無駄も少ないため、持続可能な製造方法としても注目されています。これらの利点を生かし、適切な知識と技術をもってプリント作業に臨むことで、革新的かつ高性能な製品の開発が期待できるでしょう。

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写真/Getty Images