3Dプリンターでアイデアを形に

3Dプリンターで作成した造形物に塗装を加えるポイント

3Dプリンターで作成した造形物に塗装を加えるポイント

3Dプリンターの浸透によって、ものづくりの現場で大きな変革が起きています。3Dプリンターは、短時間かつ低コストでの造形が可能で、加工やデザインの自由度が高いことがメリットです。従来の切削加工と比べると、造形物の見た目が劣る点が課題の一つとなっていますが、造形物に研磨や塗装を施すことで、見た目のクオリティを高めることができます。

この記事では、3Dプリンターで制作した造形物に塗装を加える際のポイントについて主に紹介します。

塗装するメリットとデメリット

3Dプリンターで制作した造形物に塗装を加えることで、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

3Dプリントされた造形物に、塗装やコーティングを行うことで、見た目をよくすることができます。造形物の質感を調節できるほか、複数の色をつけたり、塗料を混ぜたりすることで、イメージ通りの仕上がりに近づけられます。

また、造形物が大きく一括で出力できない場合、接着を行います。その際に、接着面を研磨して塗装することで、継ぎ目を目立たなくすることができます。

デメリット

3Dプリントで用いる樹脂の素材によっては、造形物が塗装で溶けてしまう場合があります。表面のべたつきや、強度の低下につながる可能性があるため、素材に合わせて適切な塗料を選ぶことが大切です。

仕上がりに差が出る!表面処理のコツ

仕上がりに差が出る!表面処理のコツ

3Dプリントをすると、造形の工程で積み重ねた層が段状になり、表面に積層痕が残ってしまったり、サポート材を造形物から取り外す際に痕が残ってしまったりする場合があります。どちらの場合も造形物の表面が粗くなってしまうため、塗装前に研磨や溶解などの表面処理が必要です。表面処理を行う際のポイントを見ていきましょう。

研磨・溶解のコツ

研磨や溶解などの方法で表面処理を行います。研磨か溶解どちらを選ぶかは、以下のポイントを参考にしてください。

研磨の場合は、研磨フィルムなどの研磨布紙を使って、表面を磨いていきます。このとき、積層痕の状態に応じて、研磨布紙の砥粒の目の粗さを変えながら研磨し、表面の質感をコントールできます。加工が必要な箇所だけに作業を行えることも、研磨のメリットとして挙げられます。また、研磨では薬品を使用しないので、屋内で作業ができることも便利です。ただし、研磨作業の際には、粉じんが発生します。適切な安全対策をとりましょう。また、研磨作業は時間がかかることも多く、細かい箇所の対応が難しいことが、研磨のデメリットといえそうです。

溶解で表面処理を行う場合は、造形物すべての表面を一度に処理できます。研磨に比べて、作業効率がよいメリットがあります。また、造形物の細部まで平滑化処理が行き届くことも、溶解の利点です。しかし、樹脂の素材に合わない溶剤を使うと、樹脂の強度低下やべたつきの原因となるので注意しましょう。
溶解のデメリットとしては、研磨のように表面処理の精度をコントールすることが難しい点や、表面が溶けることで寸法が変わり、自重で倒れてしまう場合がある点、溶解処理直後に手で触れると造形物が変形してしまう点が挙げられます。また、溶剤は揮発性が高いため、取り扱いには注意が必要です。

造形物の素材にABS樹脂を使用する場合は、ブラシを使用して液体アセトンを塗布するという手順をふむと、構造が複雑なモデルでも表面を滑らかにできます。ただし、溶剤を塗布しすぎると、変形や溶解のリスクがありますので、慎重に行うようにしましょう。

ブラッシングのコツ

研磨や溶解で表面処理を行った後、ブラシと水を使って、表面についたほこりを洗い流します。その際に、脱イオン水や蒸留水を用いると、よりキレイに造形物を洗浄できます。

下地処理のコツ

パーツを塗装する前に、スプレーでサフェーサーを吹き付けることで、造形物の表面の細かい凹凸や積層痕を埋めます。このとき、造形物を回転させて少しずつ塗り重ねていくことで、特定の箇所に塗料がたまることを防げます。

2回~3回塗り重ねたら、少し乾かし、ゴミがついていないかチェックして、必要に応じてペーパーで磨きます。研磨を行った場合は、ほこりを落としてから、再度、サフェーサー塗装を行います。もし、サフェーサー塗装でも埋まらない凹凸があれば、パテを用いて埋めてから、仕上げの研磨を行うとよいでしょう。

塗装の素材とテクニック

塗装の素材とテクニック

塗装の素材やテクニックについて説明します。造形物の素材や特徴に合わせて、取り入れてみてください。

塗装の素材

塗料は、濃度が薄いものの方が、ダマができたり、分厚い層ができたりしにくく扱いやすいので、おすすめです。アート用の塗料であっても、粗い表面に用いるタイプのものは、1回の塗料で済むように、厚塗りになりやすくなっています。

テクニック

塗料をつけたくない箇所を、マスキングテープや新聞紙、ビニールなどであらかじめカバーしてから、塗装を行います。これを「マスキング」といいます。パーツを塗装する際は、エアブラシやスプレーを使いますが、細部には筆を用いるとよいでしょう。手作業で塗る場合は、パレットがあると便利です。

屋内でエアブラシやスプレーを使用するときには、塗装ブースが必須です。塗装ブースの後部にあるホースを屋外に出しておくと、塗料の臭いを排出できます。屋外で作業する場合は、造形物を段ボール箱に入れて塗装を行えば、塗料の飛び散りなどを防止することができます。ただし、ホースで臭気を排出する際や、屋外で作業する際は、近隣の住宅に配慮しましょう。

より快適に作業するには、防毒マスクを用意することで、臭気をシャットアウトして作業に集中できます。臭気をそこまで気にしない場合は、粉塵用マスクを使いましょう。

塗装以外で色をつける方法

塗装以外で色をつける方法

造形物に色をつける方法は塗装だけではありません。塗装以外で色をつける方法について、解説します。

染色

染色とは、造形物を染料に浸して着色する方法です。塗装の場合は、塗料を塗った分だけ造形物が厚くなってしまいます。そのため、出力する前に、あらかじめ分厚くなる分を差し引いて設計しなければなりません。染色の場合は、着色の前後で大きさが変わらないため、分厚くなる部分を計算して設計しなくてよいことがメリットです。

また、塗装は造形物に色を噴出して着色していくため、複雑な形状では着色できない箇所が出てくる可能性があります。染色であれば、形状にかかわらず均等に着色でき、塗り残すことなく仕上げられます。

染色のデメリットとして、色を細かく塗り分けられないことが挙げられます。

カラー3Dプリンター

紙のカラー印刷のように、カラー3Dプリンターを使って出力する方法でも、造形物に着色が可能です。カラー3Dプリンターには、シアン(青)、マゼンタ(赤)、イエロー、カーキ(黒)の4色がインクヘッドに装備されています。3Dデータに色情報を付加して、最初から色のついた造形物を出力していくことになります。

カラー3Dプリンターは、使い勝手がよいのがメリットですが、色合いが限定されることや、積層痕が見えてしまうなどのデメリットがあります。

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この記事では、3Dプリンターで作成した造形物に塗装を行う際のポイントや注意点について、解説しました。学べる見積サイト・3Dプリントソリューション「3D-FABs」では、塗装や後処理の相談も可能です。素材や造形方式についても、さまざまなパターンでシミュレーションが行えます。無料登録をして、ぜひ活用してみてください。

写真/Getty Images